オチない物語「金持ちの男と好きな男」

ある男を振った。

 

大層な金持ちで、実はそこに惹かれて付き合ったのだが、どうしても我慢できずに振ってしまった。

「だって食べ方が汚いんだもん」

そう、食事の時に肘をつくのだ。

箸で人を指す。

くちゃくちゃ口を開けてものを食らう。

こぼす。

スマホを見ながら食べる。

 

キョウコは自分のことを好きだと言ってくれた男のことを思い出していた。

その男は箸の使い方が綺麗だった。

彼の選ぶお店は派手ではないが慎ましく、あたたかな料理を出すお店だった。

しかし金はなかった。

普通のサラリーマンだった。

私はお金がなくても彼が好きだったのに。

それなのに……

 

「自分に嘘をつくとこんなになるのか」

キョウコは自嘲した。

そして聞いたのだ。

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