オチない物語「家を継ぐ者」

この家に生まれたことを誇りに思う。

世間では家業を継ぐのを嫌がる人も多いと聞くが、私は全くそうは思わなかった。

学生時代も家の商いを手伝い、およそ学生がするであろう遊びなどには一切縁がなかったが、それでも別に構わなかった。

私は家の仕事が好きだ。

長い間この商いを守り続けてきた祖父や父、そしてご先祖様を心から尊敬する。

 

継続とは単純なようでいて難しいものだと思う。

それこそ、祖父や父の時代は激動の時。今とは違い世の中の変化が激しく、家業を「続ける」ことは難しかっただろう。私はこんなにも平和な時代に生まれ、特に目立った苦労もなく、今日、家を継ぐ。

だがしかし、今が安定しているからといってこの先もずっとそうであるとは限らない。

私はどんな時代になってもこの家を守り続け、私の子どもや孫たちに託したいと思う。

 

父が店主として最後の夜。

夕餉の後に父と酒を酌み交わす。

その時、普段はほとんど語らぬ父が私の目を見て言った。

「この家はお前に託す。守ってほしいとは思うが…お前の好きにしていい」

父の目は穏やかで、優しかった。

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