★ 目次
序1:瑠璃宝珠の導きと龍導師の封印解除
先日、ある島で興味深い宝物を発見した。
その島は、観光客が訪れるような華やかな場所ではない。
海風が吹き荒れ、荒々しい自然がそのまま残る、神聖な空気に包まれた場所だった。
私は何かに導かれるようにその島へ渡り、そして、それを見つけたのだ。
それは、ただの古い石ではなかった。
その青く小さな塊を手に取った瞬間、一気に1200年前にタイムスリップしたような不思議な感覚に捕らわれた。
私の前世である、ある人の祈りと想いが私の中になだれ込んできたのだ。
しかしそれは激流のような激しく荒々しいものではなく、あたたかい風が私を包み込みながら話しかけるように、柔らかく溶け込むように入ってきた。
それは、1200年前の私の前世の宝物。
「瑠璃宝珠」
これを見つけてから人生が、ガラッと変わった。
私、輝夜(かぐや)に訪れた福音は、鳴り止まないのだ。
朝目覚めるたびに、新しいインスピレーションが湧き上がってくる。
出会う人々、目にする風景、耳にする言葉。
そのすべてが、まるで私をある一つの方向へと導くための「サイン」のように感じられるようになった。
偶然とは思えないような出来事が次々と重なり、私の日常は、まるで壮大な物語の1ページへと変貌していった。
その宝の持ち主である「慈杏(じきょう)」。
陰陽師の天文生であった慈杏が作った時代の遺物を手にした時、私は理由もなく涙が止まらなかった。
魂の奥底から湧き上がるような、懐かしさと、深い悲しみと、そして圧倒的な光の感覚。
そんな不思議な、物語のような日々になる前触れは「瑠璃宝珠」を見つける前日に遡る。
「かぐちゃん、アニキから『黒龍を動かせ。これで、わかるはず』だって」
仲間のハルさんと神社巡りをする時に、アニキからの伝言をもらった。
アニキとは、アメブロで人気を博した「僕のアニキは神様とお話ができます」の「アニキ」だ。
パペットカウンセラーとして全国を飛び回り、人の心を救う活動をしている鈴木幸一、通称「くまちゃん」のこと。
「おお?了解です!・・・といっても何するかわからんけど〜笑」
そんなやりとりをしながら、真っ青な空が広がる大きな神社の境内をゆっくりと歩いていく。
私たちが神仏に挨拶に行く時、あるいは聖域やパワースポットと言われるところに行く時、必ずすることがある。
それは「愛でる」ことだ。
何を愛でるかって?
それはそこに在るすべての存在に。
その場所に息づく木々や草花、虫や鳥。目の前を横切る猫やお散歩している犬。光、空、風、水。敷き詰められている小石や石張りの道。季節によってはもっさりとした落ち葉や青々とした苔、そして雪や水たまり。
様々な音にも耳を澄ます。
鳥が気持ちよさそうに鳴く声、風がゴウゴウと鳴る音、雨がしとしと降る音。遠くに聞こえるサイレンや集まる人々の話し声。時には工事中のガタンガタンゴトゴトとした音も。
全てを愛しく愛でて、そこに存在する神々や精霊に挨拶する。
もちろんそこで出会う人々や動物や虫や木や草花にも。
そうやってハルさんと境内を愛でているうちに、ある社が見えてきた。
弁天島だ。
濁った池の真ん中にぽっこりと島があり、こじんまりとした社が佇んでいる。
「ここだね」
二人で視線を交わして頷きあう。
社に続く橋の上には地元の人らしきおじ様が熱心に濁った池を覗いている。
私たちも「鯉がいるのかな?」と言いながら、透き通ったところが微塵もない灰色の池を覗いてみた。
「・・・なにもいないね」
「うん。鯉どころか、魚もいないね・・・」
橋の上のおじ様も、何も見えないので諦めたように去っていった。
「じゃあ、黒龍さんに会いにいきましょうか!」
最初に弁財天様にご挨拶した後、社の裏に回ってそっと地面を触る。
土を触りながら龍の氣を探ると集中できるのだ。
これは輝夜スタイル。
ハルさんに見守られながら、目を閉じて私はそっと意識を潜らせる。
深く深く意識を集中させていくと、大きな龍が観えてきた。
観えたと言っても大きすぎて視界全部に収めることはできない。
こんな時、私は「人間て、ほんとにちっぽけなんだな」と思う。
卑下しているわけじゃなくて、こうして肉眼では見えない大いなる存在に出会うと、小さな私たち人間は知らず知らず、見えない存在に守られているんだと感動するのだ。
魂が震える。
龍神といってもいいであろう、大きな黒龍にそっと触り感謝と祈りを伝えた。
いつもそこに存在して、この土地を、ここの人々を守ってくれていることに。
愛してくれていることに。
「ありがとうございます」
とぐろを巻いて眠っていた黒龍が動き出したのを感じて、私は意識を肉体に戻す。
顔を上げてハルさんの方を振り向くと、ハルさんが
「かぐちゃーん!凄かったんだよ!
鯉が出てきたの!!」
と笑顔で報告してくれた。
「へ?なにもいなかったのに?」
改めて泥水のような池を見ると、なんと、鯉が集団で泳いでいるではないか!!
しかも集団で!
「えー!!この池に鯉いたの?!さっきまでウンともスンとも言わなかったじゃん!」
「でしょでしょー?!かぐちゃんが潜ってる時に、まず1匹現れてね。かぐちゃんの目の前にススーって泳いできて、口をパクッパクッてさせてたんだよ。その後に次々と現れて」
興奮しながら話すハルさんと一緒に、改めて濁った池を見る。
さっきまで生き物の気配すらなかった池に、どこから現れたのか次から次へと黒い鯉が現れて目の前を泳いでいく。
時にはイルカショーのように3列に並んで泳いだり、跳ねて音を立てたり。
再び弁財天様に挨拶をしてから橋を渡ると、最初とは別のおじ様が不思議そうに池を見つめていた。
「地元の人ですか?」
ハルさんが聞くと、
「そうそう。いつもこの神社にお参りに来てるんだけどね、鯉がいるなんて知らなかったよ。見たことなかった」
とおじ様。
マジか!
地元の人が「鯉がいるなんて知らない」と言っているんだから、これはもはや奇跡だろう。
ハルさんと目を見合わせて、無事に黒龍さんが動き出したことを確認し合う。
大いなる存在と交流すると、必ず「お知らせ」があるのだ。
それは風だったり、香りだったり、音だったり、虫や動物の出現だったり・・・
様々な形で現れる。
今回はとてもわかりやすい。
なんてったって「黒い鯉」が現れたのだから。
「登竜門」の故事にあるように、鯉は龍を表す。
「これでミッション無事完了!明日が楽しみだね〜!」
翌日は、私の前世である慈杏(じきょう)さんが残した「祈り」である「瑠璃宝珠」を探しにいくことになっていた。
(慈杏さんとの前世物語はこちらから読めます)
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